日本国紀 百田尚樹

 

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あらすじと感想

本書は、日本歴史を一つのストーリーとして、重要な歴史事実を時系列に読みやすく整理した歴史読本となっています。

私は学生勉強程度の歴史知識しかありませんでしたが、改めて日本の歴史の流れを理解できましたし、学校では学ぶことが無い大切な史実を幾つも知る事ができました。

著者は「海賊と呼ばれた男」や「永遠のゼロ」等のベストセラー作家だけあって、歴史という難しい題材にも関わらずが、読み手を惹きつけるストーリーにまとめられています。

日本歴史を、楽しく興味を持って学ぶことができますし、学校教科書の副本に使えるのでは?と思うくらい学び内容も充実しています。
年齢や立場を問わず、誰もが一読に値する素晴らしい歴史読本です。

以下に引用を記載していますが、本書で本当に読むべき箇所は、引用箇所ではなく、大東亜戦争(太平洋戦争)以降の部分だと思います。

「日本国紀」より引用

幕府はオランダ商館長から一年も前にペリー来航の情報を知らされていながら、何の準備もしていなかった。~省略~
開国要求も強まっていく中でも、幕府は来るべき「Xデー」にまったく備えていなかったのだ。
~省略~
その理由は「言霊主義(ことだましゅぎ)」にあると私は見ている。日本人は昔から言葉に霊が宿ると考えていた。
わかりやすくいえば、言葉には霊力があって、祝福を述べれば幸福が舞い降り、呪詛(じゅそ)を述べれば不幸が押しかかるという信仰である。

とくに後者について、「あってはならないこと」や「起こってほしくないこと」は、口にしたり議論したりしてはならないという無意識の真理に縛られているのである。
そうしたことを口にするのは「縁起が悪い!」と忌み嫌われるのは日常生活においてだけでなく、政治の政界においても、同様なのである。

大東亜戦争時、作戦時に参謀や将校が「失敗するかもしれない」とか「敗れた場合」ということを口にすることは許されなかった。
そのために陸軍では多くの無謀な作戦がとられ、顆しい兵士が飢えで苦しんだ。なぜなら日本の参謀は作戦日数分の食料しか用意せず、作戦通りに進まなくなった時の備えがなかったからだ。

現代においても、世界の多くの国の憲法に書かれている「緊急事態条項」が日本にはない。
それどころか国会で議論さえも行われていない。「最悪の事態が起こるかもしれない」という想定での議論が避けられるからである。
~省略~
このように、「起こってほしくないこと」は「起こらない」と考えようとする「言霊主義」は、我が国においては二十一世紀の現代にも根強く残っている。

「起こってほしくないこと」は「起こらない」と考えようとする言霊主義。この言霊主義という考え方は面白いですね。

組織リーダーにとってみれば、「最悪の事態を想定すること」は組織リーダーが果たすべき責務です。
政治においては国家指導者、企業においては経営者の役目となりますが、最悪の事態をどこまで想定するかについては、当然想定は必要であるものの、悲観的になり過ぎる事は非合理ですし、組織指導者のリスク感覚等によって判断が変わると思います。
つまり指導者としての資質に左右されるとも言えるかもしれないですね。

「日本国紀」より引用

最後の廃藩置県の実施以降、百三十年近く日本の行政単位はほぼ変わっていないのである。
この百三十年の間に、交通網や通信手段、および人々の生活スタイルは激変した。百三十年前は、ほとんどの人の生活範囲は半径数キロ以内だったが、現在は県をまたいで行動することは当たり前の日常となっている。
~省略~
行政も、もはや一県だけで行っていくのは合理的か否か疑問が生じているにもかかわらず、百三十年そのままというのは、変化を好まない日本的なやり方のようにも見える。江戸時代の二百六十五年間がそうであったように、日本の政府、日本人は基本的に変化や改革を嫌う。
~省略~
(明治維新は)江戸幕府の崩壊、襲い来る欧米列強と、激動の嵐の中で、大胆な改革をしなければ日本は生き残れないという強い危機感に突き動かされたため可能となったのであろう。

この内容は、2015年の大阪都構想の住民投票否決が当てはまるかもしれませんね。

大阪の一都市の改革でさえ否決されるのだから、国単位の変革、つまり各県や各市町村を変革する道州制、中央集権体制を根本的に改める地方分権推進などが実現される日はくるのでしょうか。

「日本国紀」より引用

日本の勝利は世界を驚倒させた。
三十七年前まで鎖国によって西洋文明から隔てられていた極東の小さな島国が、ナポレオンでさえ勝てなかったロシアに勝利したのだ。

しかもコロンブスがアメリカ大陸を発見して以来、四百年以上続いてきた、「劣等人種である有色人種は、優秀な白人には絶対に勝てない」という神話をも打ち砕いたのだ。日本の勝利が世界の植民地の人々に与えた驚きと喜びは計り知れない。
~省略~
トルコでは子供に「トーゴー」や「ノギ」(旅順攻防戦の指揮官、乃木希典大将の名前)と名付ける事ことが流行り、
~省略~
長らく欧米の植民地にされてきた中東やアフリカの人々にも大きな自信を与え、これ以降、世界の植民地で民族運動が高まることになる。
まさに「日露戦争」こそ、その後の世界秩序を塗り替える端緒となった大事件であった

当時は西欧列強が世界を植民地支配している世界情勢。その中でなぜ日本だけ驚異的スピードで近代化に成功し、列強の仲間入りを果たすことができたのか。

色々理由は後付けできますが、私が思うポイントは「教育」と「独裁」の二つです。

①義務教育の実施により、識字率が高く国民全員の教育レベルが高かった。
つまり、海外の技術や情報を誰もが理解する事が出来たので、浸透が早かったのではないかということです。

②優秀な国家指導者による実質的な独裁政治が行われ、国家は最大発展できた
つまり、廃藩置県等により中央集権体制が確立し、大久保利通を始め優秀な政府首脳が立案した富国強兵や殖産興業などの政策について、国民負担を伴っても西欧列強への脅威を背景に、国民は政府に従順(実質独裁)だったので、適切な政策がどんどん実現できたということです。

日本国紀のポイント

本書最大の価値は、本書を読むことで、大東亜戦争に至った経緯、及び敗戦後に行われたGHQの占領政策の内容を知る事ができる点にあると思います。